今年2月、こんなニュースが世間を騒がせました(※朝日新聞サイトで現在記事は読めなくなっています)。
ある女性が調査会社に「別れさせ」を依頼したものの期待したような結果が出ず、この依頼自体が公序良俗に違反しているから費用を全額返却せよ‥‥という珍しい訴訟です。
こちらでは訴訟の経験はないが…
成功しないと何をしても文句は言われますよ。
浮気して駆け落ちした亭主と女を別れさせてほしい、という依頼も多いです。
寄りを戻すというのは難しいです。
成功率はかなり低いです。
男には「美人局」ですね、この成功率は高いです。
女の場合は…
そんな女には復讐してやればいい
別れさせ工作
ニュースでは各メディアで「別れさせ屋」と連呼していましたが、依頼件数は多いです。
証拠集めという探偵の通常業務を超え、極端な言い方をすれば「相手に落ち度がなければ作ってしまえばいい」の発想で、ターゲットに働きかけて特定の行為(多くの場合は不倫などの不法行為)を促していくことを指します。
気になる異性と恋仲になるサポートをするのが縁結び工作、一度別れた相手との復縁を手伝うのが復縁工作、ある人間を会社から追い出す辞めさせ工作、恨みを晴らす復讐工作、企業や団体に潜り込んで(ゴニョゴニョ)するスパイ工作‥‥代表的なのはこのくらいでしょうか。
準備
まず依頼者から詳しく話を聞きます。
どんな相手を別れさせたいのか?希望する期間や予算は?ターゲットの個人情報は分かっている?などです。
あまりに内容が自分勝手で不合理だったり、危険だったりするとお断りするケースもあります。
「不倫カップルの別れさせ」は受けるけど「夫婦の別れさせはNG」が一般的です。
法的・倫理的にとてもまずいからです。
2002年から業界団体(日本調査業協会)が自主規制を発表し、ここに加盟している探偵社は特殊工作自体を受けられなくなりました。さらに2007年に「探偵業の業務の適正化に関する法律」が施行されて、ますます特殊工作から撤退する業者が増えています。
【依頼の人間関係】
依頼者: 38歳男性、会社経営
対象者1: 花子(仮名) 35歳、専業主婦、依頼者の妻
対象者2: 太郎(仮名) 35歳、会社員、既婚者、花子の不倫相手
仕事で忙しい依頼者を横目にダブル不倫しているという、実によくある(?)パターンですね。
依頼者は子供もいるため離婚を考えておらず、二度と2人が付き合わないよう徹底的に別れさせてほしい‥‥という要望です。
こんな場合、花子と太郎の浮気現場を撮影し、本人に問い詰めてもあまり効果は見込めません。
いったん別れたふりして、数ヶ月でまた不倫再開するのが目に見えているからです。
だからこそ工作をするわけですね。
依頼を受けるとなればターゲットの個人情報が必要です。
まったく未知の相手なら、普通の探偵がやるように素行調査から入って、相手を家まで尾行するなりして名前や勤務先の情報を得ます。
今回は太郎が依頼者の大学時代の後輩という設定にして、個人情報があらかじめ分かっているとしましょう。
太郎は既婚者で20代の妻がいて、まだ子供はいない。
中堅企業に勤め、出社と帰宅の時間帯はだいたい毎日同じ。こんな感じです。
次に、ターゲットに合わせた工作員を調達します。
工作員には「自社で常時抱えている」「必要に応じて外部から雇う」パターンがあります。
女性工作員の場合、若くてかわいいほうが当然ベターです。
あとはターゲットが好きな女優に似ているとか、共通の趣味があるとか、できるだけ成功率を高めるように選んでいきます。
工作員のプロフィールはもちろん架空のもの。
ターゲットとの連絡用に、身元が判明しにくい携帯電話も持たせておきます。
次は実行です。
男女の恋は出会いから‥‥ということで出会いの場を作ります。
ここが上手くいくかどうかで工作自体の成否が7割方決まってしまう大事なところです。
プロが仕掛ける出会いの方法といっても、案外シンプルなものです。
通勤電車の同じ車両に毎日乗って徐々に親しくなる、目の前でわざと転んで手荷物をぶちまけるなど結構なんでもアリです。
変に凝るよりもベタベタな、恋愛ドラマやラブコメマンガのようなシチュエーションを用意した方が成功率は高いような気がします。
こうして無事ファーストコンタクトに成功したら「お礼に食事でもごちそうさせて下さい!」などと持ちかけ、メアドを交換したりしながらデートを繰り返していきます。
適度に仲が深まったところで、いよいよラブホテルなんかに行ったりします。
決定的な証拠写真やビデオを撮影します。
入浴中に隠しカメラを設置します。
この関係の依頼は時間とお金が結構かかります。
依頼されたほうも経費のわりには利益がすくない、うっかりすると赤字
ターゲットの太郎と工作員の決定的な写真が撮れたら、それを使って別れさせの仕上げに入ります。
証拠をいつ、誰に突きつけるかは、状況だとか依頼者の意向とかで変わってきます。
ここで新たに別の工作員を投入しましょう。
先の工作員とは性別が逆で、いかにもチンピラ風なガラの悪い男性を用意します。
彼は女性工作員の交際相手という設定です。
オーソドックスなのは太郎と花子がデートしている場に、工作員の男が乗りこんでいくパターンです。
「オレの彼女に手を出したのは貴様か!」と写真をヒラつかせながら一方的に凄んでいきます。
花子は「私以外にもこんな若い子と‥‥奥さんと別れて結婚したいなんてウソだったのね」と幻滅して、2人の仲は終わります。
もっと大ダメージを依頼者が希望するなら、太郎の奥さんに証拠写真を突きつけるパターンも有効です。
太郎が出社中、家でワイドショーを見ている奥さんに男性工作員が訪ねていき、同じように写真を見せながらまくし立てます。
寝耳に水の奥さんとしては「うちの夫が浮気!?」「この子だれ?」「このヤクザみたいな人怖い!」と強烈なストレスを受けます。
数時間後、そのストレスから転嫁した怒りは120パーセントの濃度で太郎に叩き込まれるでしょう。
もはや花子との不倫どころではなくなり、下手すると太郎の家庭まで崩壊させることができます。
いい気分で「俺って最近モテ期?」と浮かれていた太郎は、不倫相手の花子とも妻とも疎遠になり、もちろん女性工作員とも連絡が途絶え、完全に孤立した人生を送ることになります。
いろいろ省略した部分も多いですが、これが別れさせ工作の大まかな流れになります。
それでも男性の場合は成功率が100パーセントありますが、女性の場合は50パーセントを切ります。