年末の食事会が一転…
もともとX子と被害女性のA子さんは良好な友人関係にあったという。
検察側の冒頭陳述などによると、X子は昨年7月ごろ、大阪府枚方市の物流会社にパート社員として入社。10月ごろに40代のA子さんと知り合った。2人は携帯電話の番号など連絡先を交換し、仕事帰りに一緒に食事をする仲になったという。
X子は自分が好意を寄せていた同僚男性のS氏をA子さんに紹介し、3人で食事に行くようにもなったが、転機が訪れたのは、年も暮れようとしていた12月30日。
「S氏と3人で食事に行こう」
その日はA子さんがX子を誘ったが、X子は断った。このためA子さんはS氏と2人で外食をしたのだが、A子さんはそれがまさか、事件につながるとは想像だにしなかっただろう。
この出来事の後の今年1月10日、X子からA子さんの携帯に電話があり「S氏と連絡先を交換した」と決めつけられ、一方的に非難された。
「私はダシに使われた」
X子が問われた罪の内容は大きく3つある。
《今年2月3日午後2時50分ごろ~4月4日午前6時25分ごろ、携帯電話2台を使ってA子さんに62回の無言電話などをかけた。また、2月20日~3月26日には、A子さんを誹謗中傷する内容のメールを計34回、A子さんの携帯に送信した》
大阪府迷惑防止条例で禁じられた「つきまとい行為」の反復とされ、同条例違反罪で起訴された。
2つ目は建造物損壊罪。
《2月13日、大阪府内のA子さん宅の玄関先の鍵穴を、接着剤を注入してふさいだ》
最後に、偽計業務妨害罪。罪名がバラエティーに富んでいるのも犯行の執拗さを示すものかもしれない。
《A子さんになりすまし、2月19日、アダルトグッズ販売会社2社に電話し、A子さんが注文していない電動バイブなど4点(計約1万円)をA子さん宅に配達させた》
これらの動機について、X子は裁判の被告人質問でこう述べた。
「私をダシに使ってS氏に近づき、つきあい始めた。腹が立った」
「復讐サイト」で検索
三角関係のもつれ。そう思えるが、実際はそうではなかった。
被害女性、A子さんの供述調書。
《X子被告の思い込みで、自分が狙われた。S氏をめぐって特別な関係にあったわけではない》
S氏はどうか。
《平成24年末にX子被告から声をかけられた。ある日食事に誘われ、突然、「私たち付き合っているの?」と聞かれた。「ただの茶飲み友達だよ」と答えたが納得していないようだった》
X子にとってはショックだったかもしれないが、とにかく三角関係と思っていたのはX子だけだったようだ。
S氏は事件の発端となった昨年12月30日の経緯についても述べている。
《それまでX子被告からデートの誘いがあっても断っていたが、その日はA子さんと3人で食事しようということでX子被告を誘った。断られたので中止しようと思ったが、X子被告が「2人で行けば?」と勧めるので2人で行った。すると後になって「(A子さんとなら)2人でも行けるんだ」と言われた》
X子はその後、物流会社を辞め、昼夜を問わず、A子さんに嫌がらせの電話やメールを繰り返すようになった。着信拒否されると、非通知で電話したり、公衆電話などから「ワン切り」するようにもなったという。
さらに行動はエスカレート。ほかにも嫌がらせをしようと思い、「復讐」というキーワードなどでインターネット検索。さまざまな嫌がらせ方法が掲載されたサイトを見つけ、そこで知った、アダルトグッズを送りつけたり、鍵穴を接着剤でふさいだりするという犯行にも及んだ。
「女性は同性を攻撃」
「嫉妬心から暴走した自分をどう思うか」
被告人質問で弁護人から問われたX子は「職場では自分がいつも正しいという気持ちがあった。逮捕され、自分の愚かさを学んだ。人の心は支配できないので、(A子さんやS氏とは)きちんと距離を置くべきだった」と答えた。
そして、A子さんに涙ながらに謝罪した。
「どれだけ謝罪しても取り返しがつかない。本当に申し訳ない」
検察側は論告で「A子さんとS氏の関係は被告の被害妄想に過ぎず、犯行は計画的で極めて執拗かつ悪質」として懲役3年を求刑。これに対し大阪地裁は「被害者に落ち度はなく刑事責任は軽くないが、被告は自分の性格の問題点を認識し、反省している」として、懲役3年、執行猶予4年の判決を言い渡した。
「嫉妬心による暴走」はなぜ起きたのか。
女性心理に詳しい海原純子・日本医科大特任教授は「一般的に女性2人と男性1人の三角関係でトラブルになった場合、女性は同性に攻撃的対応を取ることが多い」との見方を示す。